差別をなくすために!身体障害者の職場での対応策

差別をなくすために!

1. 職場における差別の現状

「見えにくい差別」の存在

身体障害者に対する差別は、あからさまな拒否や暴言だけでなく、昇進・異動・研修参加などの機会が制限される「見えにくい差別」として現れることもあります。たとえば、必要な配慮がされずに本人の能力が正当に評価されない場合、モチベーション低下や離職につながりやすくなります。周囲に悪意がなくても「健常者と同じ条件で頑張ってほしい」という思い込みが、不利益な扱いを生むこともあります。

法制度の整備状況

2016年に施行された「障害者差別解消法」により、行政機関や民間事業者には「不当な差別的取り扱いの禁止」と「合理的配慮の提供」が求められています。しかし、合理的配慮の内容が社内で共有されていない、あるいは実施方法が曖昧なままという課題も残っています。


(参考リンク:内閣府「障害を理由とする差別の解消の推進」)

https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai.html

当事者が声を上げにくい現状

差別や不利益を感じても、立場上声を上げにくいケースもあります。特に入社間もない人や非正規雇用の場合、異議を申し立てること自体が難しいことがあります。企業が相談窓口を整備し、第三者機関と連携して適切に対応できる仕組みをつくることが重要です。

2. 差別を防ぐ企業の取り組み

管理職・同僚への障害理解研修

管理職や同僚が身体障害について正しい知識を持つことは、差別防止の第一歩です。厚生労働省は「障害者雇用職場改善支援事業」などを通じて企業向け研修を推進しており、職場での合理的配慮やコミュニケーションの工夫を学べます。研修に当事者を講師として招くなど、実体験を知るプログラムは理解を深める効果が高いです。


(参考リンク:厚生労働省「障害者雇用職場改善支援事業」)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/shisaku/jirei/index.html

合理的配慮の制度化

合理的配慮とは、障害のある人が他の人と平等に働けるように、業務内容や環境を調整することです。たとえば、通勤時間の変更、執務スペースのバリアフリー化、ICT機器の導入などがあります。制度として明文化し、誰がどこまで対応するのか基準を決めることで、対応のばらつきを防げます。

公正な評価・昇進の仕組み

能力・成果に基づいた透明な評価制度を整えることで、障害の有無にかかわらず平等な昇進・処遇が実現します。評価基準を社内で共有し、フィードバック面談などを通じて納得感を高めることも重要です。特に目標設定や達成度の確認を丁寧に行うことで、潜在的な差別が防げます。


3. 支援機関・行政との連携

ジョブコーチ制度の活用

厚生労働省が推進するジョブコーチ制度では、専門の支援員が職場に入り、

本人と企業の双方を支援します。これにより、業務上の課題や人間関係の調整がスムーズになり、差別的扱いの予防にもつながります。事例として、ジョブコーチが配置された職場では定着率が向上したとの報告もあります。


(参考:厚生労働省「障害者職業生活相談員・ジョブコーチ」)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/06a.html

外部相談窓口の整備

行政や労働局、ハローワークなどには、障害者雇用に関する相談窓口が設置されています。企業がこうした外部機関と連携することで、当事者が安心して相談できる環境をつくれます。社内相談窓口だけでなく、外部の第三者を利用できることを周知することが信頼性向上に役立ちます。

地方自治体やNPOとの協働

自治体が主催する障害者雇用セミナーや、NPOによる啓発活動も有効です。企業が積極的に参加し、最新情報を学ぶことで、自社の取り組みの質を高めることができます。障害者本人・家族・地域のネットワークを広げることも、差別のない環境づくりに貢献します。

4. 当事者・周囲ができる差別防止の工夫

当事者の自己発信を支援

本人が必要な配慮や働き方を伝えやすくすることも、差別防止につながります。企業は、障害者職業センターのカウンセリングなどを活用し、本人の希望を整理して共有する仕組みを整えられます。自己発信を促すツール(例:配慮事項をまとめたシート)を導入する企業も増えています。

メンター制度・相談員の設置

社内にメンターや相談員を配置することで、困りごとを早期に発見し解決できます。特に入社直後や異動後など、環境の変化が大きい時期に有効です。信頼できる相談相手がいることは、精神的な安心感につながり、差別の芽を早期に摘むことができます。

働きやすい職場文化の醸成

「困っていることはありませんか」と声をかけ合える風土、合理的配慮を前提にしたチーム運営、誰もが安心して意見を言えるミーティングなど、日常の中で差別防止を組織文化に根付かせることが大切です。表彰制度や社内報で取り組みを共有するなど、好事例を広める仕組みも有効です。

5. これからの課題と展望

無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)の克服

表面的な制度だけでなく、職場の意識改革が必要です。定期的な研修や、障害者本人が講師となる体験談共有会などが、意識変革に効果的です。アンコンシャス・バイアスを測定・可視化するツールを導入する企業も増えています。

ICT・テレワークの活用

テレワークやデジタルツールの導入は、通勤負担の軽減や柔軟な勤務形態の実現につながります。こうした環境整備も差別防止策の一環といえます。障害のある社員だけでなく、全社員にメリットがあるため、持続可能な制度として定着しやすい点も特徴です。

共生社会に向けたパートナーシップ

企業・行政・家族・地域が一体となって障害者雇用に取り組むことで、誰もが安心して働ける社会に近づきます。当事者の声を反映した制度づくりが、差別のない職場実現に欠かせません。共生社会の実現は企業価値向上にも直結します。

【まとめ】

身体障害者が差別なく働ける職場を実現するには、企業の制度整備、行政・支援機関との連携、そして職場全体の意識改革が不可欠です。「合理的配慮」や「公正な評価制度」を整え、誰もが能力を発揮できる環境を築くことが、差別防止の最も有効な対応策です。

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