定着支援の専門家!ジョブコーチが果たす役割とは

職場適用を支援する。 ジョブコーチの活動内容を紹介します。

身体障害のある人にとって大切なのは「就職すること」そのものよりも、安心して「働き続けられる職場環境」を整えることです。その支援を担うのがジョブコーチ(職場適応援助者)です。ジョブコーチは、本人への直接的な助言やサポートだけでなく、企業や同僚に障害への理解を促し、職場全体で働きやすさを実現する役割を担います。本記事では「身体障害と労働」をテーマに、ジョブコーチ制度の仕組みや具体的な活動内容、直面する課題、さらに今後の展望について詳しく紹介します。

ジョブコーチ制度の概要と種類

ジョブコーチとは何か

ジョブコーチとは、障害のある人が職場で働き続けられるように支援する専門職です。身体障害を持つ人は、移動や作業動作に制約があることが多く、そのままでは仕事を続けにくい状況に直面します。ジョブコーチはその課題を客観的に把握し、作業手順の改善、補助具やレイアウト変更、同僚への指導などを行います。また、支援は本人に限らず職場全体に働きかけ、自然に協力し合える環境をつくることを重視します。

種類と特徴

制度上、ジョブコーチには「配置型」「訪問型」「企業在籍型」の三種類があります。配置型は地域障害者職業センターに配置され、広域的に支援を行う仕組みです。訪問型は社会福祉法人やNPOに所属し、企業からの依頼を受けて現場に出向きます。企業在籍型は自社にジョブコーチを配置し、自社の障害者雇用を直接支える方法です。いずれも厚生労働省が推進する制度であり、障害特性や職場環境に応じて使い分けられます。

身体障害者が直面する職場での課題

環境と設備の不適合

身体障害のある人が職場で直面する最大の課題は、物理的環境との不適合です。例えば車椅子を利用している人にとって、段差や通路幅、手すりの有無は業務遂行に直結します。視覚障害者にとっては掲示物や指示の伝達方法、聴覚障害者にとっては会議や緊急時の情報取得が困難となります。こうした問題は、単なる働きにくさだけでなく、職場での孤立感や不安感を生む要因になります。ジョブコーチはこれらの課題を洗い出し、バリアフリー化や情報保障の導入を企業に提案します。

移動・通勤の問題

通勤や職場内移動も大きな負担です。段差や階段、長い動線は身体に余計な疲労をもたらし、結果として離職につながることもあります。ジョブコーチは通勤経路や時間を調整し、必要に応じて送迎制度や在宅勤務を検討するよう助言します。また、社内での作業スペースの配置を見直し、できるだけ移動距離を減らすなど、負担を軽減する工夫を行います。こうした細やかな支援は、毎日の積み重ねとして職場定着に大きく寄与します。

ジョブコーチの具体的活動内容

作業手順化とマニュアル化

身体障害を持つ人の中には、作業手順が複雑だと混乱しやすくなる人もいます。ジョブコーチは仕事を細かいステップに分け、写真やイラストを用いたマニュアルを作成することで、理解しやすく、安定した遂行を可能にします。例えば、手に制限がある人には片手でできる作業順序を教えたり、作業台の高さを調整するなどの工夫を行います。こうした取り組みは本人の自信回復にもつながります。

コミュニケーション支援

障害のある人が職場で孤立しないためには、円滑なコミュニケーションが欠かせません。聴覚障害者の場合、会話補助アプリや筆談を導入し、会議での要点をホワイトボードにまとめるといった方法があります。ジョブコーチはこうした仕組みを提案し、同僚や上司に理解を促します。加えて、定期的に「困りごとを共有する時間」を設け、自然な支援につながる関係性を築いていきます。

制度・助成制度と事例紹介

制度と助成金

国は「職場適応援助者支援事業」を整備し、配置型・訪問型・企業在籍型を通じて支援を展開しています。また、訪問型や企業在籍型を利用する際には、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構による助成金が支給されます。企業にとっても費用負担を軽減しながら雇用を安定させる仕組みが用意されている点が特徴です。

成功事例

手に障害があるAさん(仮名)は、細かい作業でミスが続き自信を失っていました。ジョブコーチが入り、作業を分解し写真付きのマニュアルを作成、器具を改良し、同僚との役割分担を調整しました。その結果、ミスが減り、仕事への意欲が回復。現在も安定して働き続けています。こうした具体的な改善は、制度の有効性を示す好例です。

課題と今後の取り組み

専門性の向上と研修

ジョブコーチ養成研修は実施されていますが、テレワークやICT機器の普及、重度障害者支援など新しい課題に十分対応できていないとの指摘もあります。実地経験を重ねる機会や、最新技術を取り入れた研修の強化が求められています。国もマニュアルや研修教材を更新していますが、現場のニーズに即した内容へ発展させることが今後の課題です。

職場理解と地域連携

ジョブコーチの支援だけでは限界があります。最終的には企業が障害理解を深め、自然に支援できる体制を築くことが重要です。さらに、生活支援機関や医療との連携により、仕事と生活を一体で支えることが必要です。地域全体で「働き続けられる社会」を実現する取り組みが求められています

外部信頼リンク

厚生労働省「職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/06a.html

高齢・障害・求職者雇用支援機構「ジョブコーチによる支援」

https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/jirei/jobcorch.html

無断転載不可

※本記事は、編集時点で当社が保有する過去のデータや独自調査に基づいて構成されているため、最新情報と異なる場合がございます。ご利用にあたっては、各市町村最新の発表他の情報源と照らし合わせたうえでご判断ください。

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