支給決定までの流れを図解で理解しよう

支給決定までの流れを図解で理解しよう

障害福祉サービスを利用するには、市町村から「支給決定(※1)」を受ける必要があります。ただし、申請からサービスを使えるようになるまでには、いくつかの手続きや書類があり、初めての方にとっては少しわかりにくいものです。事前にどんな流れで申請が進み、どのような準備をすればよいかを知っておくことで、安心して手続きを進められます。本記事では、障害者総合支援法(※2)に基づいた制度のしくみや支給決定までのステップをやさしく説明し、自治体の工夫や制度の課題についても紹介します。

支給決定の基本ステップを知ろう

1.相談から申請までの流れ

障害福祉サービスを利用する際は、まず市町村の福祉課や障害福祉の窓口、あるいは相談支援事業者(※3)に相談することから手続きが始まります。ここでは、本人の生活状況や日常で抱えている困りごと、さらに希望する支援の内容について丁寧に聞き取りが行われ、その上で申請に必要な書類の案内や作成のサポートが提供されます。申請を終えると、サービス等利用計画案(※4)の提出が求められ、加えて心身の状態を把握するためのアセスメント(※5)を受けることになります。アセスメントは、生活能力や支援の必要性を客観的に判断するための調査であり、106項目にわたる詳細な内容で構成されています。これらの結果を基に障害支援区分(※6)の一次判定が行われ、必要と判断されれば二次判定へと進みます。こうした一連の手続きは、本人に最も適した支援を受けるための重要な第一歩となります。

2.支援区分の認定と審査会の役割

障害支援区分とは、障害のある方が日常生活においてどの程度の支援を必要としているかを示す大切な基準で、区分1から6までの段階があります。区分の数字が高いほど支援の必要度が大きく、利用できる障害福祉サービスの内容や量に直接影響します。この区分は、医師の意見書やアセスメントの結果をもとに、審査会(※7)で総合的に判断されます。審査会には医師、福祉職、行政職などが参加し、専門的かつ公平な視点で判定が行われるため、利用者にとって信頼性の高い仕組みとなっています。特に介護給付(※8)を希望する場合は、区分6が必要になることが多く、正確な評価が欠かせません。障害支援区分の認定は、サービス利用の可否や支援内容を決める制度の根幹であり、利用者の生活の質を左右する非常に重要なプロセスです。

3.支給決定とサービス開始

支援区分が認定されたあと、市町村は勘案事項(※9)として、本人の就労状況や住まいの環境、家族からの支援の有無などを確認します。これらの情報を踏まえて最終的な支給決定が行われます。支給が決まると、サービスを提供する事業者と連携して個別支援計画(※10)が作られ、利用者の希望や生活状況に合った支援が始まります。実際にサービスを使う際には、障害福祉サービス受給者証(※11)が交付され、そこには利用できるサービスの種類や支給量が記載されています。受給者証は事業者と契約する際に必要な大切な書類です。また、支援が始まったあとも定期的なモニタリング(※12)が行われ、支援内容の見直しや調整がされるため、安心してサービスを続けられる仕組みになっています。

制度の背景と課題を理解する

1.障害者総合支援法とは?

障害者総合支援法は、障害のある方が地域で安心して暮らし続けられる社会をつくることを目的とした法律です。対象となるのは身体障害、知的障害、精神障害のある方で、年齢や障害の種類にかかわらず利用できます。制度は「自立支援給付(※13)」と「地域生活支援事業(※14)」の2つから成り立っており、日常生活の介助や就労のサポート、相談支援など幅広いサービスが用意されています。利用者の状況や希望に合わせて支援内容を調整できるのが特徴で、一人ひとりに合った支援を受けられる仕組みです。また、自治体ごとに運用の仕方が異なるため、地域の実情に沿った柔軟な対応が可能です。この制度を理解しておくことで、自分に必要な支援を安心して受けられるようになります。

2.制度運用上の課題

障害福祉制度は、多くの方にとって生活を支える大切な仕組みですが、運用の面ではいくつかの課題もあります。たとえば、自治体によってサービスの内容や支援の質に違いがあり、地域による格差が生じてしまうことがあります。同じ障害があっても、住む場所によって受けられる支援が異なる場合があるのです。また、支援区分の判定にばらつきがあり、公平さをどう保つかが課題となっています。さらに、申請の手続きは複雑で専門用語も多いため、初めての方にはわかりにくいことがあります。加えて、障害者手帳(※15)が必ずしも必要ではない制度もあるものの、その仕組みを知らずに申請を諦めてしまうケースも見られます。こうした課題を解決するためには、制度の周知を広げることや相談支援体制をより充実させることが必要です。

3.地方自治体の取り組み

多くの自治体では、障害福祉制度をより円滑に運用するために、さまざまな工夫や取り組みを進めています。たとえば、福祉の相談窓口を設けて専門職が個別に対応したり、職員向けのオンライン研修を行ったりする事例があります。さらに、令和6年の法改正により、基幹相談支援センターの設置が市町村の努力義務となり、地域における相談支援体制は強化されました。厚生労働省も全国ブロック会議を開き、自治体同士が情報を共有できる仕組みを整えています。こうした取り組みによって、利用者が安心して障害福祉サービスを利用できる環境が少しずつ整いつつあります。今後は、地域の特色を活かした支援の拡充や、デジタル化による申請手続きの簡素化も期待されています。

利用者支援の実例と今後の展望

1.支援制度の活用事例

東京都では、障害年金の申請を支援するために、専門相談員が一人ひとりに合わせた個別相談を行い、申請に必要な書類作成を丁寧にサポートしています。大阪市や名古屋市でも、障害のある方を対象としたセミナーや相談会を定期的に開催し、制度への理解を深めながら申請を後押ししています。これらの取り組みは、障害福祉制度の活用を促進するだけでなく、申請に対する不安をやわらげる効果もあります。自治体による積極的な支援は、制度の利用率向上につながり、全国的に広がりを見せています。さらに最近では、地域の福祉団体やNPOと連携することで、よりきめ細かな支援が可能となり、利用者が安心して制度を利用できる環境が少しずつ整えられています。

2.地域生活支援体制の整備

地域生活支援体制の整備は、障害のある方が地域で安心して暮らすための大切な基盤です。令和6年の法改正により、基幹相談支援センター(※16)の設置が市町村の努力義務となり、相談支援の質や量が向上しています。さらに、地域包括ケアシステムとの連携が進み、医療・福祉・介護を一体的に提供できる仕組みも整えられています。自治体によっては、地域支援拠点の設置や訪問支援の充実など、独自の取り組みを展開する例も増えています。これにより、障害のある方が孤立することなく、継続的に必要な支援を受けられる体制が整いつつあります。今後は、地域住民との協力やボランティアの参加を取り入れ、共生社会を実現するためのさらなる取り組みが期待されています。

3.支援の継続とモニタリング

障害福祉サービスの質を守るためには、サービス開始後に行われるモニタリング(※16)がとても大切です。相談支援専門員やサービス提供事業者が定期的に利用者の状況を確認し、必要に応じて支援内容を見直します。これにより、生活環境や心身の状態の変化に合わせた柔軟な対応が可能となり、支援の効果を高めることができます。さらに、モニタリングは利用者との信頼関係を築く機会にもなり、安心してサービスを続けられる環境づくりにつながります。制度を長く安定して運用していくためにも、継続的な支援体制は欠かせません。そして、モニタリングで得られた情報は次回の支給決定にも活かされ、より利用者に寄り添った制度づくりへと発展していきます。

注釈一覧

(※1)自治体が障害福祉サービスの提供を正式に認める判断。

(※2)障害者の自立と社会参加を支援するための法律。

(※3)障害者の相談に応じ、支援計画の作成などを行う専門機関。

(※4)利用者の希望や生活状況に基づいた支援計画の初期案。

(※5)利用者の心身の状況を評価するための調査。

(※6)支援の必要度を示す指標。区分1~6まである。

(※7)支援区分の判定を行う専門家による会議体。

(※8)日常生活の介助を目的とした福祉サービス。

(※9)支給決定にあたり考慮される生活環境や支援状況。

(※10)サービス提供事業者が作成する具体的な支援内容の計画。

(※11)サービス利用者に交付される証明書。

(※12)支援の継続的な評価と見直しを行う活動。

(※13)障害者の自立を支援するための福祉サービス。

(※14)地域での生活を支えるための支援事業。

(※15)障害の状態を証明するための公的な手帳。

(※16)地域の相談支援の中核を担う機関。

外部信頼リンク(20259月時点)

– 厚生労働省:サービスの利用手続き
  https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/service/riyou.html

– 障害者地域生活支援体制整備事業|厚生労働省
  https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/chiikiseikatsu_shientaisei_seibi.html

※本記事は2025年9月時点の情報をもとに、厚生労働省や地方自治体の公式情報を参照して作成しています。なお、障害福祉サービスの詳細や運用方法は自治体によって異なる場合がありますので、必ずお住まいの自治体のホームページなどで最新の情報をご確認ください。無断転載は固くお断りいたします。

※本記事は、編集時点で当社が保有する過去のデータや独自調査に基づいて構成されているため、最新情報と異なる場合がございます。ご利用にあたっては、各市町村最新の発表他の情報源と照らし合わせたうえでご判断ください。

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