障がい福祉サービスの申請方法利用までのステップを解説

障がい福祉サービスの申請方法利用までのステップを解説

障がいのある方が自ら望む自立した生活を送るためには、日常生活や就労を支える「障がい福祉サービス」の活用が重要です。しかし、制度や申請方法は複雑で、初めて利用する方やご家族にとっては分かりにくい部分も多くあります。本記事では、申請から実際のサービス利用開始までの流れをステップごとに解説し、制度の概要や事例、そして自治体の取り組みについても紹介します。これから申請を検討している方や支援者の方にとって、具体的な手順とポイントが分かる解説内容となっています。

障がい福祉サービスの基本と制度概要

障がい福祉サービスとは

障がい福祉サービスは、障害者総合支援法や児童福祉法などの法令に基づき、障がいのある方が地域で安心して暮らせるよう支援する制度です。対象は身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)などで、日常生活の介助や就労支援、相談支援など多岐にわたります。サービスは大きく「介護給付」と「訓練等給付」に分かれ、前者は生活介護や居宅介護、後者は就労移行支援や自立訓練などが含まれます。サービスには期限があるものと、期限がないものとありますが、期限があるものでも必要に応じて一定期間更新(延長)することができます。

サービスの分類と内容

障がい福祉サービスは、目的や内容に応じて以下の4つに大別されます。

居宅系サービス(生活支援)

利用者が自宅で生活を続けながら受けられる介護サービスのことです。
居宅介護(ホームヘルプ):入浴・排泄・食事などの介助
重度訪問介護:重度の障害がある方への包括的支援
行動援護:行動に著しい困難のある人への支援
同行援護:視覚障害者の移動支援

日中活動・施設系サービス

障がいのある方が日中に安心して過ごしながら、
生活支援や社会参加の機会を得られるようにする福祉サービスです。
生活介護:常時介護が必要な人の支援施設
就労移行支援:一般就労に向けた訓練
就労継続支援A型・B型:雇用契約の有無に応じた支援
自立訓練(生活・機能):生活能力や身体機能の訓練

相談支援・地域支援サービス

必要な福祉サービスの利用や生活上の課題解決を支援します。
計画相談支援:サービス等利用計画の作成
地域移行支援・定着支援:施設や病院から地域生活への移行と定着を支援

児童向けサービスの概要

18歳未満のお子さまが安心して成長できるよう、発達支援や生活支援を提供する制度です。
児童発達支援:未就学児対象の療育
放課後等デイサービス:学齢期の子どもが通う日中支援
保育所等訪問支援:集団生活のサポートを目的とした訪問支援

制度の根拠と運営主体

制度は国が法律を定め、都道府県や市区町村が実施主体となります。申請や利用調整は基本的に市区町村が窓口で、サービス提供は指定を受けた事業者が行います。利用者は原則1割負担ですが、世帯区分と所得に応じて負担上限が設定されています。
世帯区分 月額負担上限額
・生活保護受給世帯 0円
・市町村民税非課税世帯 0円
・一般世帯(所得により) 9,300〜37,200円

利用対象者の範囲

障害福祉サービスの利用対象者は、以下のように定められています

基本的な対象者

障害者手帳(身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳)を所持している方が中心です。

手帳がなくても利用可能なケース

医師の診断書や意見書により、障害や支援の必要性が認められれば、障害者手帳がなくてもサービスを利用できる場合があります。
例:障害福祉サービス受給者証の取得により、手帳の有無に関わらず支援が可能。

対象となる障害や疾患の範囲
・発達障害(診断がなくても支援が必要と認められれば対象)
・難病患者(特定疾患に該当する場合)
・精神疾患(うつ病、統合失調症など)
・身体障害・知的障害

・グレーゾーンの方も対象に含まれることがある
発達障害の診断基準を満たさない「グレーゾーン」の方でも、支援の必要性が認められれば利用可能です。

申請前に確認すべきこと

自身のニーズ整理

申請前に、自分にどのような支援が必要かを整理します。例えば「通院の付き添いが必要」「就労に向けた訓練を受けたい」や「一人暮らしをしたい」「将来の生活が不安」など、長期的な視点での希望や課題も記録しておくと、支援計画に反映しやすく、生活や就労の課題を具体的に書き出すと、後の計画作成がスムーズになります

情報収集と相談窓口の活用

・市区町村の障害福祉課
・地域包括支援センター
・相談支援事業所
上記などの各窓口で制度やサービス内容を確認します。
自治体によって利用できるサービスや手続きの流れが異なる場合があるため、
公式情報を確認すると手続きがスムーズです。

必要書類の準備

障害福祉サービスの申請をスムーズに進めるためには、事前の書類準備が重要です。以下の書類が一般的に必要とされます。

主な提出書類

・障害者手帳(身体・療育・精神のいずれか)
医師の診断書または意見書(手帳がない場合や追加の確認が必要な場合)
本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、健康保険証など)
印鑑(自治体によっては不要な場合もあるため要確認)
申請書類一式(自治体指定の様式)

注意点

・書類の不備や不足は、審査や手続きの遅延につながる可能性があります。
・書類の有効期限や記載内容にも注意が必要です(特に診断書は発行日から○ヶ月以内などの制限がある場合あり)。


事前確認のすすめ

・必ず市区町村の障害福祉課や相談支援事業所で、必要書類の詳細を確認しましょう。
・電話や窓口で「どのサービスを利用したいか」を伝えると、必要書類の案内がスムーズになります。

申請から認定までの流れ

市区町村への申請

利用希望者は市区町村の障害福祉担当課に申請書を提出します。
この際、サービス利用の目的や必要性を説明するための障害福祉担当課の職員から聞き取りが行われます。

調査・面談

自治体職員や相談支援専門員が自宅や施設を訪問し、支援の必要度を客観的に判断するための生活状況や支援の必要度を調査します。これを「障害支援区分認定調査」と呼び、全80項目の内容を元に介護の必要度を数値化します。
【全80項目の参考内容】
身体機能:歩行、移動、着替えなど
日常生活:食事、入浴、排泄、金銭管理など
意思疎通:視力、聴力、コミュニケーション能力など
行動障害:暴言、徘徊、異食行動など
医療的ケア:透析、経管栄養、酸素療法など

支給決定と受給者証の交付

調査結果と医師意見書をもとに審査が行われ、支給量やサービス内容が決定します。決定後、「受給者証」が交付され、これがサービス利用の正式な許可証となります。申請から交付までには一定の時間がかかるため、早めの準備と相談が大切です。

サービス利用開始までの準備

サービス等利用計画の作成

受給者証をもとに、相談支援専門員と一緒に「サービス等利用計画」を作成します。これは利用者の生活目標や必要な支援内容を明記した計画書で、生活の羅針盤とも言えます。事業者選びの指針にもなります。

事業者との契約

計画に沿って、利用したいサービス事業者と契約します。契約時にはサービス内容、利用時間、料金、キャンセル規定などを確認します。
契約は「サービスの質と安心」を左右する大切なステップです。不明点は遠慮なく事業者に質問し、納得したうえで契約を進めましょう。

利用開始とモニタリング

契約後、サービスが開始されます。利用開始後も定期的にモニタリングが行われ、必要に応じて計画の見直しが行われます。サービスは「始めて終わり」ではなく、継続的な見直しと改善が重要です。

参考リンク

・厚生労働省 障害者福祉
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/index.html
・東京都福祉保健局 障害者総合支援法
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/shougai/shogai
・社会福祉法人ふれあいネットワーク全国社会福祉協議会 パンフレット
https://www.shakyo.or.jp/download/shougai_pamph/date.pdf

※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としています。詳細は必ずお住まいの自治体窓口でご確認ください。
※無断転載不可

※本記事は、編集時点で当社が保有する過去のデータや独自調査に基づいて構成されているため、最新情報と異なる場合がございます。ご利用にあたっては、各市町村最新の発表他の情報源と照らし合わせたうえでご判断ください。

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福祉制度の解説、就労支援現場の取り組み、利用者や職員の方のインタビューなどを通して、
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